「このメールを返したら休む」と言ううちに、一緒に休むはずの時間が過ぎていく。この記事では、この休憩の先送りがなぜ起きるのかを、短い休憩と作業の中断の研究から説明します。そのうえで、休憩を時刻で決め、止める前に1分で再開メモを残す方法を紹介します。
「このメールを返したら」で、妻は先に飲み終えていた
夜、子どもが寝たあとに、家で仕事の連絡を返しています。妻に「コーヒー飲まない?」と聞かれ、「このメールを返したら」と答えました。一通返すと別の連絡が気になり、ようやく画面を閉じたときには、妻はもう飲み終えていました。
一緒に休みたかったのに、また待たせてしまった。仕事の連絡には早く応えたいし、家族との時間も大事にしたい。どちらも本当の気持ちなので、自分にがっかりします。
仕事が全部片づくことを休む条件にしていると、区切る時刻はいつまでも決まりません。休憩の先送りは、怠けているからではなく、区切り方を決めていないことから起こります。
最後に「このメールを返したら」と言ったとき、そのメールは今夜返す必要があったでしょうか。
原因は二つ:途中の仕事が頭に残ることと、休憩を後回しにすること
休憩が先送りになる理由は、研究から大きく二つ考えられます。
理由1
途中の仕事が頭に残り、手を止めにくい
仕事の中断を調べた研究では、途中の仕事に急いで戻らなければと思っていると、次のことに注意を切り替えにくく、前の仕事が頭に残り続けることが分かっています。これを注意残りと呼びます。同じ研究では、止める前に「どこから再開するか」「何が残っているか」を短く書いておくと、注意残りが減り、次の作業の成績が上がりました(Leroy & Glomb, 2018)。
「このメールを返したら」は、この注意残りを避けようとする自然な反応です。ただ、仕事は一通返すたびに次が見えてくるので、区切りは後ろへずれ続けます。
研究の範囲
学生が、履歴書の評価などの仕事に近い課題で確かめた結果です。家での休憩でも、戻ったときにすぐ再開できるか、休憩中に仕事が気にならないかで効果を確かめられます。
理由2
休憩は、仕事が終わるまで待たなくても意味がある
10分以内の短い休憩を調べた22の研究をまとめた分析では、短い休憩でも活力が上がり、疲れが減っていました。効果は小さいものの、はっきり確かめられています。一方で、作業の成績全体が上がるとまでは言えず、負担の大きい作業では10分より長い休憩が必要かもしれないとされています(Albulescu et al., 2022)。
つまり、休憩は「全部終わったご褒美」でなくても、途中に入れるだけで意味があります。終わりを待つ間に、その機会を逃しています。
研究の範囲
学生や実験室での研究を中心に確かめられた結果です。家での夜の休憩でも、休んだ後の疲れ方の違いで、自分に合う長さを見つけていけます。
対策は二つ:休憩を時刻で決め、止める前に再開メモを書く
二つの理由に対応して、対策も二つあります。
対策1
休憩を「終わったら」ではなく、時刻で決める
理由2への対策です。「この仕事が終わったら」は、いつ来るか分からない条件です。「20時30分になったら、保存して立つ」のように、いつ・何をするかを先に決めておくと、実行しやすくなります。「状況Yになったら、行動Xをする」と決めておく計画は、94の検証をまとめた分析で、目標の達成を助けることが示されています(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。
対策2
止める前に、戻ったら最初にやることを書く
理由1への対策です。途中で止めても戻る場所が書いてあれば、仕事を頭の中に抱えたまま休まずに済みます。研究で使われたのも、1分ほどで書ける短いメモでした(Leroy & Glomb, 2018)。
今の作業を止めるつもりで、戻ったら最初にやることを一行だけ書いてみてください。書けたら、その作業はいつ止めても戻れます。
再開メモの例
止めた所:見積書の確認、2ページ目まで
残っていること:単価の根拠を課長に確認
戻ったら最初に:3ページ目の合計欄を見る
今夜、休憩の時刻を一つ決めて、1分のメモを残す
道具は、紙かスマホのメモがあれば足ります。夜の流れは次のようになります。

先に決める
休憩の時刻と、それまでにやることを決める
- 休憩の時刻と長さを決め、相手に聞く「あとで」ではなく「20時30分から10分」と言います。誘ってくれた相手にも、その時刻で都合が合うかを聞きます。
- それまでにやる作業を一つに絞る今日中に返す必要がある連絡かどうかを確かめ、時刻までにやる作業を一つ選びます。明日でよい連絡は、メモに書いて明日に回します。
止めて戻る
時刻になったら1分で書き、戻ったらそこから始める
- 1分で再開メモを書いて、画面を閉じる「止めた所」「残っていること」「戻ったら最初にやること」を一行ずつ書きます。途中でも、書いたら画面を閉じます。
- 戻ったら、メモの最初の一手から始める休憩のあとは、メールを最初から見直さずに、メモの一行目から再開します。終わったらメモは消します。
休憩中に何をするかは、相手に合わせます。飲み物は家にあるお茶や水で十分です。何かを買う前に、まず時刻で区切ることを試してください。
締め切りで止められない日は、終わる時刻を伝えて相談する
今日中に必要な仕事がある日は、決めた時刻に止められないこともあります。これは道具では解決しません。そのときは、黙って「もう少し」を繰り返すのではなく、事情と終わる時刻を伝えて、休憩の時刻を相談し直します。
相談の例
「この返信は今日中に必要だから、あと15分使いたい。20時45分からなら一緒に飲める? 難しければ先に飲んでいて」
相手が「今日はもう休みたい」と言うなら、別の日に回してかまいません。一緒に過ごす時間を作るために、相手を待たせることを当然にはしないことが大切です。
待つ側にとってつらいのは、待つ時間の長さより、いつ終わるのか分からないことです。
参考にした研究・資料
- Albulescu, P., Macsinga, I., Rusu, A., Sulea, C., Bodnaru, A., & Tulbure, B. T. (2022). “Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLOS ONE, 17(8), e0272460.
- Leroy, S., & Glomb, T. M. (2018). Tasks interrupted: How anticipating time pressure on resumption of an interrupted task causes attention residue and low performance on interrupting tasks and how a “ready-to-resume” plan mitigates the effects. Organization Science, 29(3), 380–397.
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119.

